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2005-12-14-01-金目当ての国

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最終更新日付:2014/01/01 20:30:53


金目当ての国

2005 年 12 月 14 日

葵木和寿さんが 2005/12/06 の日記の中で、トヨタ自動車会長でもある日本経団連会長の奥田氏の記者会見での発言を取り上げている。1週間遅れだが、これに反応しておきたい。

実は、このあたりの話題に関しては、結構な長さの原稿を書いてあるのだが、半年以上も手を付けられずにデッドストック状態になっている。このままだと本当に捨てなければならなくなるので、ここでちょっとだけ小出しにしておきたいという思いもあるのだ。では、はじめようか。

陰郎の出身は愛知県で、両親は今でも名古屋で小さな会社を経営している。その会社の経理関係を請け負ってもらっている会計事務所からいろいろ話が聞こえてくるのだが、あの巨大な自動車メーカーの下請けに対する締め付けは相当キツいのだそうだ。これに関して長々と書くつもりはないが、陰郎が言いたいことは次の点だ。相応の給料なりボーナスをもらっている元請け自動車メーカーの従業員は、会社が下請けをぎりぎりのところまで締め付けているということを一体どう考えているのだろう? 知らないではすまされないはずだ。

また、下請け企業の経営者や従業員は、元請けの自動車メーカーが順調な経常利益を上げ続けているのをどんな思いで見ているのだろう? 「この単価で請けてもらえないのなら、他に発注するからいいですよ」などと元請けの担当者に足元を見られ、それでも仕事がないよりましだと内心忸怩たる思いでも請けざるをえない現実を前にして、いったい何を思うだろう?

陰郎は賭け事をしない人間だが、こういうことを考えると株にも手を出す気になれない。株式を持つということは、法律上は株式会社の社員になるということだ(一般に言う社員は「従業員」)。その会社が下請けを締め付けたり、道理に反することをして得た利益が株主に還元されるといっても、そんな金は受け取りたくもない。同じ理由で、陰郎はそんな会社の従業員にもなりたくない。自社の利益が、下請けを締め付けた結果として確保したものであるならば、恥ずかしくてそんな金は受け取れないではないか。だから陰郎は個人事業主として、IT 業界の元請け/下請けヒエラルキーの最下端にいる。それでも自分の心が安寧を得るわけでもないのだが、それはまた少し別の話だ。

陰郎は、元請け/下請けの関係というのは「共に働く」というイメージを持っていた。元請けが儲かれば、程度の差はあれど下請けも儲かるものだと思っていた。そう、過去形だ。これは残念だが現代では甘い幻想として片付けられてしまったようだ。その代わりに据えられたのが欧米型の「正統派資本主義」だと陰郎は思っている。別名拝金主義。理念や大義といったものはお飾り程度で、いざとなれば簡単に棚上げされるほど軽い。下請けや従業員は会社/経営者からはっきりと線を引かれ、利益を上げるために利用するのが基本。あの自動車メーカーは良いサンプルだ。その会長が日本の拝金主義化を警告するなど笑止千万。あとは歴史だ。

 

コメント

いなあも - 12/14/2005 01:42:16 PM

難しい話や資本主義に関しては置いておくとして…

例の巨大自動車メーカーさんの生産管理方式である「カンバン方式」とは、自社倉庫に部品在庫を極力ストックしないという運用思想です。

部品在庫数を極限まで減らす事で「現金以外の資産を減らす」、「迅速な計画変更に柔軟に対応できる」というメリットがあるわけで「カンバン方式」は世界に知られる生産管理方式として高い評価を受けています。

その一方、そのしわ寄せは下請けにやってきます。

発注元の時間単位での納品指定に迅速に対応するためには、本来発注側がストックするべき在庫を下請けが持つ事もあるでしょう。

しかし、それは急な計画変更があった際に在庫が全て多額の不良資産になるというリスクを負うことでもあります。

これは本来、発注側が負うべきリスクであるはずなのにそうなっていないのが、あの会社の問題。

結局、発注側は好き勝手やっても儲かるようにリスクを下請けに回しているのでしょうね。

あれだけの売り上げと利益があれば、その一部を下請けに還元できるような仕組みでも十分に企業としてやっていけるだろうに。

…ああ、十分に難しい話になってしまったかな。これはほんの一部の例なんですけどね。

mizuno-ami - 12/14/2005 04:06:51 PM

利益は上に、リスクは下に。

そういうピラミッドですね。経営者集団から大絶賛されるわけですよカンバン方式というのは。

まぁ、直接の従業員と思しき人たちの生活もトヨタ市民、じゃなくて、豊田市民なので、街の色々な場所で垣間見る事が出来ますが・・・あまりよい暮らしはしているとは思えません(笑)社内でも同じ構造が出来ているんじゃないかと思ったりして。

最近、自動車関連の労組は「雇用の保証」を前面に出しています。寄らば大樹の陰で、就職したものの、次は個々に首切りが待っている状態。まぁ、これが資本主義の自由競争ですけど…

MACY - 12/14/2005 06:55:46 PM

株価が15500円を超えたと言っても、そのヒエラルキーの最上位の会社が利益を上げているだけで、中位以下の会社も、従業員も、明日が見えない中で四苦八苦しているのが現状だと思います。

にもかかわらず、景気が回復してきたとして減税の廃止や量的緩和解除を唱える政府や日銀と、それに対して異論を唱えないマスコミ...

みんなヒエラルキー上位なんでしょうね。

陰郎 - 12/14/2005 08:52:12 PM

みなさん、コメント有難うございます。

「利益はこちら。リスクはそちら。」という図式は完全に弱肉強食の資本原理主義ですよね。「カンバン方式」という名前の由来がちょっと想像つきませんが、そもそも疑問なのはなぜそのような不義理を誰も表立って批判しないのかということです。皆拝金主義に堕しているんでしょうかね。

昼休みに職場で急いで書いたので、ちょっと書き足りません。別エントリとして補足でもしておこうかしら。

このままもっと貧富の差が激しくなったら、ああいう会社にテロを仕掛ける連中とかも出てくるかもしれませんな。そうなったら資金協力くらいはしてあげよう。(笑

葵木和寿 - 12/15/2005 12:10:08 AM

私の書いた一言がきっかけになっていたのなら嬉しいです。(決して明るい話題ではありませんが。)

このような問題に対してもきちんと声を上げて行くことが今後大切だと思います。そうしなければこの国の国民の、心の豊かさと言うのはどこかに置き忘れられてしまうでしょうから…

バーディス - 12/15/2005 12:39:35 AM

T社の偉いところは下請けをいじめるだけでなく、T社が要求する水準までコストが下がるよう、下請けの面倒を見るところだそうです。具体的には、指導員を派遣してT社の生産方式を指導し、改善活動を通じて下請けを育成していくということです。このような活動は他の自動車メーカーにはないT社の美点だそうです。

実際は、改善活動と称してT社の人間に社内の深い部分にまで入りこまれ、生かさず殺さず、骨の隋までしゃぶりつくされるわけです。実務者としては、とっととウチの会社に見切りをつけてくれ、というのが本音ですが、なまじ深い付き合いになれば、簡単に取引を終わらす事も出来ません。ましてや、下請けの社長がT社信者だった場合は悲惨です。どれだけ貢げば気が済むのだろうと思います。

すみません、単なるグチになってしまいましたが、客観的にみて、現時点ではT社は資本主義社会における、紛れも無い勝ち組みです。その意味でT社の存在を否定することは出来ませんが、他の会社は別の手法で勝ち組になって欲しいものです。

陰郎 - 12/15/2005 12:26:18 PM

なんだかコメントがいっぱいで、ウチのサイトじゃないみたいです。

> 葵木さん

世知辛い世の中になってきましたよねぇ。理念・理想なしに妥協が現実的たりえるわけがないのに。政治家や経済界や経営者にお願いしたいのは、職人に余計な心配をさせないでくれ、ということです。職人には職人の仕事があるんだから。

> バーディスさん

なるほど...T社にはそういう美点もあるんですね。どちらかというと「なにをやっているか」よりも「なんのためにやっているか」の方が気になりますが。

重要なのが勝ち負けだけなら、拝金主義でいいでしょう。名誉とか、尊敬に値するかどうかとか...ま、そのあたりのことはもうひとつエントリをあげますんで。

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