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2006-03-22-01-幻想を捨てろ

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最終更新日付:2013/12/31 18:38:06


幻想を捨てろ

2006 年 03 月 22 日

正直、書ききれなかった文章を晒します。捨てるのがなんとなく忍びないので。でも、デキがイマイチなので 「 追記 」 欄に掲載します。あんまり見ないで。

例をあげろを言われれば、さほど苦労もせずに片手の指は塞がってしまう。何の話かといえば、システム障害のことだ。有名な件だけでも、最近なら東証の取引システム、数年前ならみずほ銀行のトラブル。細かいものをあげつらえば本当にきりがない。各種のニュースチャネルもネタに困らないだろう。社会的な影響が大きければ新聞・テレビ・雑誌などで大々的に報じられ、原因の究明がどうだとか責任の所在がなんだとかと取り沙汰される。そして問題を起こした企業のトップが浮かれた報道陣の前で頭を下げるセレモニーが執り行われ、同業他社は残念そうに首を振る...少々大袈裟に言えば、その企業およびシステムにだけ問題があり、その他のシステムは問題なく動いている...ように見えてしまうかもしれない。しかし、本当にそうだろうか。

もし、情報システムの設計や開発・運用といったものに関わったことがない人で、上記のような「問題は問題を起こしたシステムだけにある」という認識を持っている方がいるならば、それは誤った幻想だということをどうか理解していただきたい。少なくともこれまでに陰郎が見聞きしてきた限り、世の中に「何の問題もなく動いている」システムなどほとんど存在しない(まぁ陰郎の見聞など狭いものだが)。「まだ」何も起きていないだけだ。無論、微細な不具合だけで運用できているものは優秀といっていいわけだが、いずれにしても内部的には酷い脆弱性を抱えたまま動いているシステムがほとんどだ。そしてある日、なにかのはずみでシステムが「通ったことのない道」を歩く。それで終わりだ。情報システムで「通ったことがないが存在するルート」というのは大抵が地雷原である。そこを通ることで吹っ飛ぶのが顧客の片足なのか、企業の信用なのかはケース・バイ・ケースだが、大抵は両方だし、なんにせよそのように覚悟しておいたほうが賢明だろう。

このことは、たとえば問題を起こした銀行を使うのをやめて別の銀行を使う、といったことが何の解決にもならないことを意味する。同業他社のトラブルを見て残念そうな顔をしている企業のトップは、その裏では同じ轍を踏まぬようにその場しのぎをすべく自社のシステム部門の尻を叩いているのだ。それがいけないと言いたいのではない。それが現実だと言いたいだけだ。少なくともそれによって全体の品質水準が多少なりとも上がるのならば、問題の発生は(少なくとも完全には)無駄ではなかったということになる。

これらの現状に関して、陰郎はいわゆる「誰かさん」のせいにするようなことを書くつもりはない。情報システムであれそれ以外のものであれ、市場とそこを満たす空気は作り手、売り手、顧客の全員が作り上げるものだ。「安い、早い、不味い 」の三拍子がそろった情報システムが量産される現状は、顧客がせっつき、売り手がそれに媚び、作り手が唯々諾々とそれに従った結果なのだ。誰かだけのせいであるわけがない。市場は全員が等しく吐き出した空気で満たされている。無論、陰郎自身もその中にいて、同じように呼吸している。吸い込むと気分が悪くなるが、息を止めていられる時間は短い。

幻想を捨てろ。安くやらせれば安っぽいものしか手には入らないということを思い出せ。「顧客が望んでいる」だの「競争に勝つため」だのと言い訳をする前に自分たちの理想を壁に刻んでみろ。泥をかぶっていいのはその後だ。たとえそれが時代の流れだとしても、その流れを作っているのはまさに自分たちではないのか?

 

コメント

葛西 - 03/24/2006 12:36:31 AM

この業界には、冷静にリスクと、そのリスク軽減の効果と説明を出来る「売り手」がいないのが現実でしょう。

稀に、「買い手」が自らリスク軽減の必要性を感じている場合のみ、比較的健全なシステムの構築がされていると思います。

まだまだ若い業界、未成熟なサービス・製品なのです。

陰郎 - 03/24/2006 01:44:40 AM

> 葛西

不健康ネタ以外で反応してくれたのがなんか嬉しい。

たしかに、まだ若いし未成熟だけれども、問題は現在値ではなくて変化の度合いだ。どれくらいの速さで成長しているか。無論、規模ではなく質の話だけどな。もし良い方向に変化しているのなら、少なくとも未来は明るいわけだろう? でもなにも変わっていないなら、今も未来も暗いままだ。未来が明るいなら、今を我慢することもできるのだろうけど。

ri - 12/22/2006 12:54:54 PM

だいぶ昔の記事になってしまうのですが・・。

私の中ではみずほのトラブルは極端に言ってしまうと、システムトラブルも有りますが上層部の暴走によって引き起こされてしまった感があるのですが。

一方

合併3社を、X、Y、Z銀行として、あるコンピュータメーカーx社からX銀行には「4月1日のシステム切り替えは延期したほうが無難と警告した」ようですが、その警告を受けたという噂をZ社又はY社の情報システム部門の’課長クラス’の人間が聞いたと仮定すると、企業倫理的に考えてできる対応は何でしょうか?又その行動に関する妨げも出てくるように思えるのですが。

陰郎 - 12/22/2006 11:53:34 PM

> ri さん

コメントありがとうございます。この手の話題にコメントいただけるととてもうれしいです。

さて、上層部の暴走、ご指摘のとおりだと思いますし、それに反する内容を書いたつもりもなかったのです...が、読み返してみるとその辺のことがあまり書かれていませんね。というのは、当時内情を知っていた仕事仲間から、現場レベルでは「ヤバい」ということを皆知っていたのに上が無理やり押し切ったという話を聞いていたからです。その結果として起こるべくして起こったシステムトラブル...というところなのでしょう。

それはそれとして、このエントリの趣旨は「問題は問題を起こしたシステムだけにある」という発想は幻想なんだよ...という主張にあります。また、冒頭のエクスキューズにもあるとおり、本人としても「デキがイマイチ」という認識なのでその点はごめんなさいということで。(汗

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