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2014-01-25-01-不可解な幻想

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最終更新日付:2014/01/25 01:06:39


不可解な幻想

2014 年 01 月 25 日

一昨日から転がる話の、第二弾。

また「昼間の仕事」の話になるのだけれど、以前書いたとおり、今仕事をしているのは結構な大企業様だ(これも以前書いたことだけれど、自分はそこの従業員ではない)。で、そういうところにありがちなお題目である、フリーソフトウェアはサポートが受けられないから云々に続いて、今回は同じ病気の別の症状である、自分達でコードを書くよりも製品を買った方が云々についてだ。

先にこの意見をあえて擁護しておくと、他の条件がまったく同じであれば、「同じ動作をする」製品を購入する方が管理上の面からは良い。きちんとした製品を選択すれば(もちろんそうするべきだが)、それはちゃんとテストされており、そのベンダがたくさんの顧客に販売するという前提の元にユーザは自分達でスクラッチから開発するよりもはるかに低いコストで導入することができる。そりゃそうだ。事実上、そのたくさんの顧客の間で開発コストを折半し、ベンダの利益分を上乗せして支払うのだから。そんなことはわかりきったことで議論の余地もない。それでも自分達で作るというのは正直馬鹿げている。

でも、問題はあるんだ。それは上の段落で書いた、「他の条件がまったく同じであれば」という部分だ。状況によっては、その『他の条件』というやつが同じでなくなるんだ。たとえば、自分達が必要とする機能が既存のサードパーティ製品にない場合とか、逆に機能があり過ぎる場合(時にはそれも問題になる)とか。そういったズレがクリティカルでお話にならないのであれば、そもそも選択の余地なく「自分達で作る」道へと進むだろう。問題は、その中間だ。

そういう場合、自分達で作るか製品を買うかはトレードオフを考慮して自分達で決断しなけりゃならない。その時、彼ら ── えぇと、なんていうか、要するにソフトウェアを自分で書かない人達 ── は、自分達で作らずに製品を買うという方向に強いバイアスを受ける。まぁ公平のために書いておくと、彼らに言わせれば、「ソフトウェアを書く連中はなんでも自分達で作りたがる」ということになるのだろうけれど。

で、そういう場合のトレードオフは大抵微妙なので、コストをかけて自分達で作りましょうという意見は大抵通らない。そして製品を買った場合の影響というのは地味で目立たない。しかしそれは確実に存在し、小さいが様々な問題を発生させる。たとえば使い心地が悪くてミスをしでかし易いとか、特定の機能がないために日々の作業コストが大きくなるとか、そういった「小さいが手の届かない問題」に足をとられながら毎日を歩むことになるのだ。本当に公平に(買うか作るかの)比較をするならば、そういった稼働開始後の小さなロス(金銭的なものでなく時間/人的コスト)やリスクを積算した見積りまで考慮に入れなければならない。しかしこれは数量化が難しい。

結局最後は愚痴になるのだけれど、自分は今まさに「昼間の仕事」でそういう目にあっている。自分のボスにあたる上司(当然いわゆるプロパー社員)が、とあるサーバソフトウェア製品のことを大好きで、とにかくなんでもそれでやりたがる(というかやらせたがる)。それはもう、うわごとかと思うほどに、そうでなければ壊れたロボットのようにその製品の名前を繰り返すわけだ。そしてそれに反対する意見には耳を貸そうとしない。しかし、実際に構築する自分の側から見れば、それは「手の届かない小さな問題」の塊のようなもので、必要な機能をそのサーバソフトウェア製品で実現することを考えるとまるで悪夢でも見ているような気持ちになる。たとえば、ひとつひとつの設定はテキストファイルとして保存されているわけではなく、そのサーバソフトウェア製品の、どこだかわからない場所に ── おそらくはバイナリ形式で ── しまい込まれている。当然個別に資産として(つまりは CVS なんかで)管理することはできず、変更前後の diff をとることもできない。その機能についてだけ取り出したり、移したりもできない。そういったあれこれは、全部「手の届かないところ」にあるのだ。それを悪夢と言わずして何と言うのか。

彼らは幻想を抱いている。自分達の組織でモノ作りをしなければ失敗することもないと。それはたしかに失敗ではないかもしれないが、しかし同じくらい成功でもない。そして、相応のコストが削減できるとも思っているだろう。残念だがそれは間違っている。それについてはもう書いたとおりだ。そして自分はといえば、雇い主のそんな幻想(妄想と呼ぶべきか)に心底うんざりして、愛想が尽きかけているのだ。

 

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