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books:シンプリー・パーム

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最終更新日付:2014/01/03 19:03:38

シンプリー・パーム

理想のPDAを目指して

基礎情報

ISBN 4-7973-1999-2
発行所 ソフトバンク パブリッシング株式会社
定価 2400円+税
著者 Andrea Butter、David Pogue
監修 伊藤 正宏

レビュー

前々から読んでみたいと思っていたので、手にはいるうちにと思って購入しました。読んでみたところ、期待以上に面白かったのでこのブックレビューに加えさせて頂くことにしました。本来はソフトウェア開発に関する書籍だけのはずですが、このサイトも僕だけのものになってしまってますし、ちょっとした逸脱ですから気にしないことにします。余談ですが、このレビューの原稿はすべて愛用(しかも買ったばかり)の Tungsten T5 で書きました。

この本は、パームコンピューティング社の創設者達が Palm Handheld という素晴らしいデバイスを世に送り出すまでに(いや、送り出した後も)みまわれることになる苦難と流浪の歴史を綴った、いわば発明と冒険の物語です。小さなベンチャー企業としてスタートするも最初の製品を世に出す直前に資金難から会社を売却。その後も親会社からの政治的な干渉に翻弄され、強敵マイクロソフト社による挑戦を闘い続け、さらに親会社が吸収合併されるに至ってはもう苦難のフルコースと言わざるをえません。しかし彼らは闘い続けました。創業者であるジェフ・ホーキンスやドナ・ダビンスキーらは離脱してハンドスプリング社を設立しましたが、パームコンピューティングとともに Palm OS プラットフォームの普及に努め、最後には再び palmOne 社に合流することになります( palmOne 社への合流はこの本よりも未来の話ですが)。

僕がなによりも気に入っているのは、いわゆる 「 Zen of Palm 」 ── パームの教え── と呼ばれる思想です。いつだったかネットのどこかで目にしたことがありましたが、この本にはその思想が形成される過程が詳しく書かれています。余計な機能を詰め込まないことによる小さな筐体の実現、それまでの手書き認識技術からグラフィティへの発想の転換、よく使う機能ほど少ない操作ステップで利用できること、小さくて使い物にならないキーボードは付けなかったこと...それらの措置の根底に共通して流れているのは「シンプルであれ」という発想であり、それこそが Palm をして何百万人ものユーザーを熱狂させた美学なのです。Palm が成功するまでは世の通念として PDA は高機能なほど良いと考えられていたらしいので、これはコペルニクス的転回をともなう挑戦だったと言っても決しておおげさではないでしょう。この、常にユーザーの視点を忘れない「ものづくり」への誠実かつ真摯な姿勢は、ハードウェアであれソフトウェアであれ、すべての開発者が肝に銘じて見習うべきものがあると思います。

熱心なパームユーザーの方は是非読みましょう。Palm のことがもっと好きになること請け合いです。他社の PDA を使っている人も読みましょう。きっと Palm の方がいいと思うようになります。そしてこれから PDA を使ってみようかと考えているあなた、もちろんじっくりと選んでから決めてほしいのですが、その時には是非この本を手にとって頂きたいと思います。最終的に何を選ぶことになるとしても、この本はあなたに貴重な情報を与えてくれることでしょう。

 

 


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